

おじいちゃんの作る服。
コットン/リネンの染め。 比翼、白ボタン。 左見頃にピンタック。 丸襟。
風情のあるシャツ。 安島さんしか作らない服。
「〜しか作らない服」というのは擦られ過ぎているから、あまり書きたくないんだけど。
なんかこう、日陰の服だとは思う。 でも、陰気臭くはない。 どこかに能天気さが香る。
このバランス感覚は手に入れようと思って手に入れられるものではない気がする。
フランスの昔の服を参考にしたのだろう。 商品名にFrenchって付けているし。
思えばおじいちゃんとする会話はフランスとイタリアと旧ドイツの話が多い。
その国々が持つ暗い過去も、市井の人々の暮らしも丸ごと好きなんだと思う。
じゃあこれがフランスの服か?と問われれば、それは違う。 おじいちゃんの服であり、つまるところこれは日本の服だ。

先週末、「ウポポイ」という北海道白老町のアイヌ施設に行った。
数年前からずっと民族的な文化に関心がある。 話されていた言葉、信じる神、そこで着られていたもの、食べられていたもの。
そこで見た展示は、圧倒的な純度の文化に感じられた。
作られた文化ではなく、もっと土着の、生々しい生活の痕跡。
一緒に訪れた友人が北海道で教員をやっていたのも良かったのだろう。 北海道ではアイヌがどのように扱われて、どの様に教えているかを断片的ではあったが教えてくれた。

儀礼用に仕立てられた服。洋服的でもあるし和服的でもあるし中国服の様でもあった。全て手刺繍。刺繍の方法も沢山あって、柄は全て異なる。ハンドメイドだからこその発想、量産という概念が生まれる前の服。今でもアイヌ刺繍を受け継いでおられる方のインタビュー動画では「ずっと同じ刺繍をしていてもつまらない。つまらないから一つ一つ変える。」と仰っていた。少し笑ってしまった。モノ作りの原点の感覚だなって思った。ちなみに大迫力でしたよ。執念すら感じる洋服。
おじいちゃんの作る洋服をアイヌの服と比べるのは両方に対して失礼だが、何故か僕は似たものを感じました。
それはきっと技法を超えた、ファッションを超えた、カッコいい悪いを超えた、つかみどころのない言葉にすることが難しいもの。
アイヌ刺繍の本を2冊買ってきたので、お店に置いています。 おじいちゃんの洋服と一緒に見てみてくださいね。