
セレクトショップは、ブランドが作った世界観の中で、それを構成する洋服を選んで仕入れる。
この行為は、編集と例えられる。言い得て妙だなと思う。
雑誌で特集を組んだり、アルバムの曲順を考えたり、漫画の内容に手を加えたりしながら
消費者により作品の素晴らしさを伝えようとする行為。確かにセレクトショップは編集だ。
では、この夥しい数のチェックシャツは、何だ? 誰がどう編集したら、こんな有様になる?
これはSUGARHILLが今季発表したチェックシャツで、僕がお店のスタンスに則ってセレクトしたら、こうなってしまった。こうしたかった、というより、こうなってしまった、がより正しい。全部違うんだもん、仕方ないじゃん。と思っている。

丸襟、フラップ、ボタンでかめ。シャツジャケットのような感じ。フラップが身頃から一続きで、パターンも面白い。

ここ数シーズン展開しているスキッパータイプ。透け感あんまりないので、がっつり胸元開いてる服を着たことがない人でも着やすいと思う。肌離れもいいので夏にいい。ジャケットの中に着ると只者ではない感じが出るのもいい。

定番の開襟。きっとSUGARHILLというブランドを体感していただけると思う。

そしてこれ。
これは、ヤバい。
何がヤバいかというと、チェックが歪んでいること。


これを、プリントじゃなく、織りでやっていること。
よろけ織り、というらしい。恥ずかしながら初めて知りました。今、勉強しています。技法の細かい話は是非店頭で。
縦糸をよろけさせることができるということは、ストライプでも出来るはず。真っ直ぐじゃないストライプ、歪んだチェック、思想を表現する衣類として、創造の幅が一気に広がる。と思う。名前もキュートでいい。よろけ織り。

前立てから裾に至るまで、構造もよろけちゃってるシャツもあります。
我々のセレクトショップとしてのスタンスは編集ではなく、翻訳なのだと思う。
ブランドの直営店ではないけれど、直営店のような意識と品揃えがあればいいなといつも思っている。
デザイナーが洋服を作ってくれなかったらお店は成り立たないし、それを消費者に適切に届けることができなければお店は成り立たない。お店はあくまでブランドと消費者の中間地点に存在していて、お店としてのエゴはそこまで必要ないのかなと思う。どのブランドを揃えるか?また、そのブランドの中で何をチョイスするのか?そこにお店のエゴはどうしても宿ってしまうもので、殊更粒立ててエゴを主張しなくても、何ならそのエゴをどれだけ隠そうとしても、エゴは滲み出てしまう。ブランドと消費者が第一で、届けるために編集ではなく翻訳する意識を持ちたい。結果としてみれば、編集じゃん、って言われるんだろうけど、事実ではなく精神性として。
「SUGARHILLのチェックシャツを題材にお店としてのスタンスを示すのはエゴじゃないの?」って? それはまあ、滲み出ちゃったということにしてくださいよぉ。