トートバック?

今シーズンのお店のラインナップの中で、異質なもの。

最初展示会で見たときは、びっくりしました。プライスが付いていたから。「あ、これ売りものなんだ。ショー用のアイテムじゃないんだ。」って。同じような感想を店頭でも抱いていただいていることでしょう。

当たり前にスルーすべきアイテムであり、爆弾。今季オーダーしたBed jw Fordのアイテムの中で一番高いし、一番日常生活に不必要だし、一番変。当然、オーダーする奇特なお店はない。オーダーがないことはBed jw Fordのメンバーも分かっていたことでしょう。ブランド設立からたった15年足らずでパリ・ファッションウィークの公式スケジュールに載る実力のあるブランドが、こんなことを分からないはずが無い。

でも彼らはこれを作りました。そして僕はオーダーしたので、お店にあります。

なぜオーダーしたのかというと、嬉しかったんですよね。装いの表現から逃げない姿勢とか、モノ作りに対する執念とか、自身のブランドに対する徹底的な美意識とか、「表現」の名のもとにショーアイテムだからと割り切って売らないのではなくキチンとオーダーできるし買えるようにして商売からも逃げないところとかが。

一見して売れないように見えるアイテムを作るには、絶対的な理由があるはずです。例えその絶対的な理由が消費者には伝わり切らなくても、製作者の中で存在していれば。ボケなのかマジなのかは、モノを見ていただければ分かっていただけることでしょう。大マジです。慎平さんも僕らもマジなの少し恥ずかしいからボケっぽく言っちゃうけど。

衣類は誰にとっても必要ですが、ファッションは必要ない人もいます。日常からほんの少し脱却するストーリー、世間的に必要とされなくても自分にとって大切に思えるモノがあることはとても贅沢なことです。

「Working Class Theater」と名付けられた25SSコレクションにおいて、最も端的にコレクションを表したアイテムはどれでしょうか?と聞かれたら、僕はこのアイテムを推したい。

「いつ覗いても暇そうで、入るにはハードルを高く感じるし、何で続いているのか全く分からない」とこれまで数多の人に言われてきましたが、僕が目指すお店はまさにそういう「何で続いているか誰にも分からないけど、ずっと続いている」お店なので、望むところです。

この工具箱も「何で作ったのか、何で売っているのか、意味が分からない」ので、ウチのお店に相応しいです。

うっすら社会に反抗しながら、孤独に自由に、楽しそうに。誰でも着れそうで、誰にでも好かれそうで、ちょっと頑張れば買えるくらいの金額のモノばかりのお店より、生々しくて怖いくらい美しくて到底買えない金額のモノもたまにあるお店の方が好きです。

本質的にセレクトショップは無意味なものになっていっています。

セレクトショップでしか買えないものはないし、一点モノという幻想は古着屋さんの専売特許となっていて、その事実をずっと見つめています。洋服を通して提示したい考えや態度を他者に依存することなく主観的に捉えて、お店に来てくれる人と共有していくことができればきっと面白いお店になると思うので、そういうお店でありたいです。

さて、実際の用途に関して。まず、実際にお仕事で使う人がいたら、痺れ上がるほどカッコいい。ファッションとして使うなら、難しいことは考えずに、普段のスタイルに何でもない顔をしてただ持ちましょう。あまりにも教科書がないので、あなたのスタイルが教科書になります。

ウチの子どもの宝物箱にしてもいいかなと思っています。本当に大切なモノだけしまってね、という約束で。今だったら彼は銀河鉄道999のトミカと、水星のマグネットと、ハリネズミのぬいぐるみを入れるんじゃないかな。お店に来た人は、土を入れて花壇みたいにしよっかな〜とか、メガネを収納する箱にしよっかな〜とか、結構色々な使い方を考えていました。

このアイテムに関して、こちらから使い方を提案するのは野暮な気もするので、ここら辺にしておきます。お店にいらしたら、触ってみてください。

Tool Bag (Blue)


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