
Copano86のデザイナーは70歳を超えているので、おじいちゃんだ。
洋服とお酒が好きなおじいちゃん。
このおじいちゃんの服は、とてもいい。
独特な洋服を作る。
ブランド認知を広めるための活動だとか、セレクトショップへの営業だとか、そういうことを一切していない。 恥ずかしいんだそうだ。
おかげで、このブランドを取り扱っているのはウチと熊本にあるショップの2件だけらしい。
奇妙なことに、その熊本のショップさんはウチと同様にYohjiyamamotoを扱っている。
この二つのショップでは、日本が誇るビックブランドと、誰も知らないおじいちゃんの服が一緒に並んでいることになる。
知名度や影響力に圧倒的な差がある両ブランドだが、僕らは知名度や影響力を着る訳ではない。
ただ、洋服を着る。
重要なのは、作られた洋服に試行錯誤の痕跡があり、込められた思想があり、面白い洋服に仕上がっているかどうかである。
非常にシンプルなことだが、シンプルな考えで物事に当たるのが一番難しい。
だから僕はたまにおじいちゃんの洋服を見て、着て、シンプルさを取り戻す。

襟が取れる。台襟の中にボタンが仕舞われるので見た目には作用しない。が、写真の通り、第一ボタンは外して着るので、見た目に作用する。もちろん全て留めることもできる。

ヨークにギャザー。ふんわりした見た目と着心地。袖下に切り替えがあり、デザイン的にも着心地的にもいい。ちなみにこの袖下の仕様は、僕が自分で洋服を作った時にパクった。もちろんおじいちゃんには許可取りしましたよ。笑って許してくれました。というか、僕の洋服のパターンは全てこの人にお願いしています。また時間的余裕が出来たら作りたいですね。

袖アップ。畳むには苦労するけど、着るにはとてもいい。畳むに苦労するのは、洋服が立体的に作られている証拠でもある。
このブランドを見にお店に来る人はいない。
しかし、このブランドからモノ作りの楽しさを受け取る人はいる。
ウチが取り扱っているブランドの中では、服飾学生が一番見ていくブランドのような気もする。
おじいちゃんが作った服を見て、孫世代が新しい洋服を作ろうとしているのを見ると、なんだかいい気分になる。